交差適合試験
薬剤師にとって交差適合試験は検査の領域であるため、少々取っつきにくい分野だと思うのは私だけでしょうか??ここではできるだけ簡単に交差適合試験について説明してみたいと思います。
多分に私の思い込みとか勘違いがあると思いますので、検査関係の方やよくご存じの方は”ご意見メール”を送っていただくようお願いします。
目的
輸血副作用の防止・・・不規則抗体による即時的な輸血副作用(溶血反応)の発生を最小限にとどめて、できるだけ安全な輸血を行うための方法
主試験と副試験
| 患者血 | ドナー血 | 目的 | |
| 主試験 | 血清 | 血球 | 患者血清中のドナー血に対する不規則抗体の検出 |
| 副試験 | 血球 | 血清 | ドナー血清中の患者血球に対する不規則抗体の検出 |
方法
生理食塩水法・・・主として完全抗体(IgM)を検出する
陽性になった場合、抗A・抗B・抗Lua・抗Lub・抗M・抗N・抗P1・抗Lea・抗Leb・抗Sda・抗Tja・抗I・抗H抗体などが検出される
ブロメリン法・・・主として不完全抗体(IgG)を検出する
酵素を用いることにより赤血球膜表面の電位を下げて赤血球間の距離を縮め、抗体が赤血球に結合しやすい状態にする方法
陽性になった場合、抗D・抗C・抗c・抗E・抗e・抗P1・抗P・抗Tja・抗I・抗Lea・抗Leb抗体などが検出される
アルブミン法・・・主として不完全抗体(IgG)を検出する
アルブミンの適量添加で誘電率を高め、赤血球間の距離を縮め、抗体が赤血球に結合しやすい状態にする方法
陽性になった場合、抗D・抗C・抗c・抗E・抗e・抗Lua・抗Lub・抗Tja抗体などが検出される
間接クームス法・・・主として不完全抗体(IgG)を検出する(間接抗グロブリン試験)
クームス血清(抗人グロブリン血清)を加えると赤血球に結合している不完全抗体に抗人グロブリン抗体が結合し、凝集を起こす
陽性になった場合、抗S・抗s・抗D・抗C・抗c・抗E・抗e・抗Fya・抗Fyb・抗Jka・抗Jkb・抗Lub・抗K・抗k・抗Lea・抗Leb・抗Dia・抗Dib・抗Doa・抗Coa・抗Cob・抗Yta・抗Ytb・抗Aua・抗Sda・抗Tja・抗Jra・抗Bga抗体などが検出される
結果と解釈
| 主試験 | 副試験 | 自己対照 | 輸 血 |
| − | − | − | 可*1 |
| + | − | − | 不可*2 |
| − | + | − | 不可*3 |
| + | + | − | 不可*4 |
| − | + | + | 保留*5 |
| + | − | + | 保留*6 |
*1輸血してよい
*2輸血してはならない
a)ABO不適合が疑われる
b)患者血清中に不規則抗体の存在が疑われる。まれに直接抗グロブリン(直接クームス)試験陽性のことがある。
*3しかたなく輸血する場合監視しながら注意深く行う
a)ABO不適合が疑われる
b)ドナー血中に不規則抗体の存在が疑われる
c)患者にpolyagglutinationがある場合
*4輸血してはならない
a)ABO不適合が疑われる
*5患者の直接抗グロブリン試験陽性と解釈されるので精査する
*6精査する
a)生食法でのみ陽性ならば、寒冷凝集、連銭形成、汎血球凝集反応などが疑われる
b)ブロメリン液による非特異反応も考えられる
検体の採取時期
過去3ヶ月以内に輸血歴・妊娠歴のある場合はクロスマッチ用の検体を輸血予定日前3日以内に採取することが望ましい
副試験のこと
クロスマッチテストの際、ドナー血の血液型検査と間接抗グロブリン試験を含む不規則抗体スクリーニング検査、および患者の血液型検査とが正しく行われていれば、赤血球製剤の輸血では副試験を省略しても良い。
血漿、血小板製剤について
血漿成分製剤および赤血球を殆ど含まない血小板製剤の輸血では交差適合試験は省略して良い。
原則としてABO式血液型の同型血液を使用する。
緊急時の輸血では
少しでも時間のあるとき・・・患者の最新の検体でABO式血液型検査を実施し、同型の赤血球製剤を用意する。引き続き交差適合試験を行う。
全く時間のないとき・・・O型(+)の赤血球製剤を使用する。(本当はO型(-)の方が良いんだけどネ!)しかし、できるだけ速やかにABO式血液型検査を行い、同型の赤血球製剤の輸血に切り替える。
O型赤血球で輸血を開始し、相当量を輸血したあと患者の血液型が判明したときは、その後の輸血については輸血の途中で採取した最新の患者血液と同型の赤血球製剤との間で行った交差適合試験(生理食塩水法の主試験)の結果に基づいて判断する。
大量輸血時では
24時間以内に患者の循環血液量と同等又はそれ以上の輸血を大量輸血という。
大量輸血時には交差適合試験を十分行う時間の少ない場合が多いが、少なくとも生理食塩水法による交差適合試験(主試験)を行う。